児童精神科病棟 下畑 宏延このページを印刷する - 児童精神科病棟 下畑 宏延

一人の人間として、人間と向き合う。看護の本質を実感できる場所。

一人の人間として、人間と向き合う。看護の本質を実感できる場所。
昭和53年、袋井市生まれ。
天竜病院附属看護専門学校を卒業後、天竜病院へ。
外科、泌尿器科、重心、内科などを経て、2010年より児童精神に勤務。二女のパパ。

どの子どもも自分の家族だと思って接する

児童精神科は、発達障害など、心の病を持つ子どものケアを行います。薬やカウンセリングを通じて怒りのコントロールをしたり、落ち着いて学習できるように生活習慣を整えていきます。子どもだけでなく、親子関係がうまくいかないとか、どのように子どもと接して良いのかわからないという保護者への対応も大事な仕事です。

病棟には就学前から18歳までの子どもたちが常時30人位います。ちょうど人間形成の基盤となる時期に、そんな子どもたちの大きな可能性を見出し、広げられる仕事はやりがいも大きいし、楽しいですね。精神科の前部長が座右の銘にしていた「ファミリースピリッツ」という言葉が私も大好きで、どの子も自分の子どもと思って接するように心がけています。

もちろん子どもたちがなかなか心を開いてくれなくて、大変なときもありますでも、子どもと同じ目線に立つこと、認めてあげること、耳を傾けることを辛抱強く続けていけば、その距離も縮まり、楽しく接することができるようになっていきます。決して難しいことではなく、時には厳しい父親として、時にはやさしいお兄さんとして、そして頼れる看護師として子どもたちとじっくり向き合う。今まで心を固く閉ざしていた子どもが、私と話すことで笑顔になったり、ほかの子と喧嘩して謝ることができたり、やさしい言葉を言えたり、そんな些細な変化を喜びに感じる毎日です。

昨年、小学校を卒業する直前に入院してきた発達障害の男の子がいました。衝動性の高い子で、地元のどの中学校も受け入れることに消極的だったんです。私は、院内だけで完結させるのは無理だと判断し、近くにある天竜特別支援学校や地元の小中学校の先生、児童相談所、区役所の福祉課の方々と協力し合い、それぞれの立場からアプローチして地道に治療、カウンセリングを続けました。その結果、無事に中学校へ入学させることができました。その後も元気よく通っていると聞いたときは、思わずガッツポーズしましたね(笑)。状況に応じて、病院と学校、行政機関との連携を強化することも、子どもたちの未来を拓くために必要なんだと実感しました。

人と人との関わりの中で 患者さんの変化を促していける

人と人との関わりの中で 患者さんの変化を促していける
私は、外科、泌尿器科、重心、内科も経験しましたが、今がいちばん充実していると感じています。ほかの病棟では経験できなかった「看護の本質」を児童精神科で深められていると思うからです。児童精神科は、外科のように「処置」で病気を治すのではなく、人と人との関わり、コミュニケーションの中で徐々に変化を促していきます。関わり方ひとつで患者さんの症状を変えられることもある、それが私の考える看護の本質です。外科にいた経験があるから、余計にそう感じるのかもしれませんね。

職場は男性も多く、活気があります。子どもたちの保護者はシングルマザーの方も多いので、父性を知らない子もいます。だから、男性看護師でなければできないこと、役割もあると思うんです。私も二人の娘の父親ですが、この病棟で働いた経験が育児に活かされています。娘たちと接するときも、以前と比べてかなり我慢強くなったように思います(笑)。
残業も少なく、希望すればイレギュラーの休みも取れます。普段からチームワークが良いので、同僚と呑みに行くこともあります。

私は看護専門学校卒なので、大卒の資格を取得するのが直近の目標です。院内の勉強会はもちろん、院外のセミナーにも積極的に参加していますが、将来的には児童精神科のスペシャリストになりたいと思っています。
聞いた話によると、児童精神科に興味を持っている看護師がかなり多いとか。でも、何となく敷居が高くて、専門性も高そうだから踏み出せないそうですね。私も確かに慣れるまで少し時間はかかりましたが、今振り返ると、そんなに深く考える必要はなかったなぁと感じています。ほかの病棟と同じように、飛び込んでしまえば大丈夫です。子どもたちの笑顔と未来のために、ぜひ一緒に働きましょう!